議会報告

犯罪被害者等支援条例が可決

    

2021.12.14

自民党を代表して質問いたしました、犯罪被害者等支援条例が可決されました。

会派としては平成30年の石田康博市議が、その後、私自身議員にしていただく前から成立を求めてきた条例が可決されました。
代表討論には、宮前区の矢沢孝雄市議が登壇し、教育支援や柔軟な運用について討論しました。

ここから被害に遭われた皆様に寄り添った運用を求めてまいります。

 

・代表質問・代表答弁

質問

議案第161号川崎市犯罪被害者等支援条例の制定について伺います。

条例案策定に際して、犯罪被害者および関係法人、団体等の関係者に対して、二次被害の状況、事件以降も継続して必要と望む支援策や相談等を集約したのか伺います。
また、条例案に反映させるべく、原案策定過程においてどのような調査やヒアリングを実施したのか、具体的取組の内容を伺います。
また、寄せられた意見の集約を行う過程において、把握一した課題点や改善点等の整理は勿論、条例原案の策定に際して、学識経験者や弁護士、公益社団法人全国被害者支援ネットワーク等、犯罪被害者の支援を行う団体や第三者の|意見も集約した上で条例案を策定したのか伺います。併せて、専門的知見を有する第三者からは、どのような意見が示されたのか伺います。

答弁

条例案策定時の取組等についてでございますが、犯罪被害者等支援施策について検討するにあたり、他都市へのヒアリングなど各種調査を実施するとともに、専門的な知見を有する学識経験者、実際に被害に遭った経験をされている犯罪被害者当事者、日常的に犯罪被害者等の支援に携わっている被害者支援団体、県警被害者支援室、及び法律の専門家としての弁護士等からなる「川崎市犯罪被害者等支援有識者会議」を設置し、これまでに4回開催してまいりました。

会議では、支援施策の充足度や客観性、公平性等を担保するため、様々な視点や専門的知見に基づく意見等を伺いながら検討を進めてきたところでございまして、「県では支援対象が限定されていて、カバーできない犯罪被害者等が存在するので、市で支援して欲しい」「初期から中長期にかけて途切れることなく支援できるような制度が望ましい」などの意見をいただいております。

質問

手続きに際して、庁内関係部署間でどのような組織を編成して協議を実施したのか、その有無ならびに参加した関係部署の名称、部署数および協議の開催日時と、その内容を伺います。併せて、専門的知見を有する第三者も参加したのか伺います。

答弁

次に、庁内における協議についてでございますが、「川崎市犯罪被害者等支援庁内連絡会議」を組織し、関係部署は総務企画局企画調整課、行政改革マネジメント推進室、財政局財政課、健康福祉局企画課、こども未来局企画課、まちづくり局市営住宅管理課となっており、専門的知見を有する第三者には参加いただいておりません。

同会議は令和3年2月5日、5月12日、6月23日、10月20日に開催し、庁内調整方法、支援内容や条例案等について協議を行ってまいりました。

質問

議案第161号は、条例制定の背景として令和元年5月3日に発生した、多摩区登戸での事案が示され、国や県との役割分担を踏まえ基礎自治体として犯罪被害者に寄り添った支援の拡充を図るとしていますが、本事件事案を通じて、条例制定に至るような課題点はどのような内容であったのか伺います。

また、その解決、改善に向けた取組状況を伺います。

答弁

条例制定に至る課題等についてでございますが、現状として犯罪被害者等に特化した支援がなく、既存制度は様々な要件があり、支援開始までに時間がかかるなどの問題点を認識し、支援制度の構築は喫緊の課題と捉・えたことから、本市といたしましては、犯罪被害者等に特化した条例を制定するとともに、基礎自治体として寄り添った支援の拡充を図ってまいりたいと考えております。

質問

本事件事案では、被害に遭遇した児童生徒は、未だ小学一校低学年として在籍しています。PTSD等を含む後遺症は、長期間に亘る心のケアが強く求められるとともに、児童のみならず保護者、教師など広範囲に及ぶ対象者へのサポートが必要であると考えますが、事件後、本市が取り組んできたサポートの期間および具体的内容を伺います。
また、長期的視点に立ったサポート対応をどのように進めているのか現状を伺います。

答弁

対象者へのサポートについてでございますが、健康福祉局及びこども未来局が神奈川県と連携し、児童、保護者、学校教員向け講座の実施や学校からの要請に基づき、心理職職員を一定期間派遣しており、派遣終了後におきましても、心のケアの実施について必要に応じて相談支援機関の情報提供や教職員向けの研修を行ってきたところでございます。

質問

行政機関は、基本的に申請主義に基づく執行体制で対応していますが、本事件事案のように被害者対象年齢が低く、且つ、長期間に亘る心理的ケアが必要とされるケースでは、学校内部でのケアだけに留まる事なく、在宅訪問を通じた|家庭内での個別ケアなど、集団被害に対する広範囲且つ、|重層的なサポートが強く必要とされます。相談を待つ姿勢ではなく、行政側からの積極的なアプローチが求められますが、対応を伺います。

併せて、在宅訪問を通じた個別ケアに対し、どのような対応を図ってきたのか伺います。

答弁

行政からのアプローチについてでございますが、犯罪の被害に遭われたという情報については、「要配慮個人情報」であり、取扱いに特に配慮を要し、市からの支:援を希望され、被害に遭われた方の同意があって初めて県警察から市へ情報提供が行われるため、これまでの対応といたしましては、被害に遭われた方の意向を確認した上で、御自宅に近い公共施設に職員が出向いて面談や電話による相談等を行ってまいりました。

質問

本事案のようなケースでは、行政機関に寄せられる要望が多岐、長期間に亘るものと考えられますが、その為には、犯罪被害者の一括した相談対応窓口の一元化が強く求められています。本市では、本事案に対して、窓口の一元化脈化を図って対応してきたのか伺います。
また、今後条例が制定された後は、どのような対応を図るのか伺います。

答弁

対応窓口についてでございますが、県警察からの情報提供があった際の対応については、市民文化局において窓口の一元化を図り、関係部署との連絡・調整を行ってきたところでございます。
また、条例施行後におきましては、市民文化局内に設置するワンストップ支援窓口において、専門職を配置し、窓口の機能強化を図ってまいりたいと考えております。

質問

本事案では、私立学校法人を直接所管する部署が県とされているため、本市の組織を横断した緊急ケア対応は、事件同年の7月で終了しています。その後、個別対応で相談事案に対処してきたと考えますが、県のサポートで他は救済されないような事案があったのか伺います。
本市に寄せられた相談事案に対して対処出来なかったケースがあったのか、その内容と併せて伺います。

また、事案から経年した現在でも、県との協議を踏まえて、被害者等の相談や要望に対応しているのか現状を伺います。

答弁

個別対応についてでございますが、県の支援に加えて、市の支援を希望された方がおり、既存施策について御案内を行うなど相談等を行ってまいりましたが、御要望にお応えすることはできなかったところもございました。

今後も引き続き支援ニーズをお聞きし、既存施策へつなげるなど寄り添った支援を行ってまいりたいと考えております。

質問

本事案の発生を教訓に、本市が直接の所管ではない市内の私立学校や幼稚園等と協議を行い、犯罪対策や連絡体制の強化および円滑化を目的とする連絡調整会議のような場を設置したのか伺います。また、今後の対応についても伺います。

答弁

私立学校等との連絡体制についてでございますが、既存の学校警察連絡協議会の枠組みにおいて私立学校も参加しており、幼稚園につきましては、所管局と連絡体制について再確認を行ったところでございます。

今後につきましても、引き続き既存の枠組みを活用しながら、連携を図ってまいります。

 

・再質問

質問

議案第161号川崎市犯罪被害者等支援条例の制定について、再度伺います。

条例案策定時の取組等における答弁では、「川崎市犯罪被害者等支援有識者会議」を設置し、これまで検討を進めてきた中で、会議に出席していた委員からは、「初期から中長期にかけて途切れることなく支援できるような制度が望ましい」などの意見があったとのことです。
一方、12月3日付けの記事では、これまで行政と共に本条例を検討してきた有識者会議の委員から、条例案が制定前の事件の被害者を支援の対象外としていることを「知らなかった」といい、市に方針の見直しを求めている。との報道がありましたが、事実関係を伺います。

併せて、共に条例案制定に向けて取り組んできた有識者会議委員からの意見を本市としてどのように捉えているのか伺います。

答弁

川崎市犯罪被害者等支援有識者会議委員につきましては、これまで委員の方々からそれぞれの立場から御意見をいただき、条例案等の検討を進めてきたところでございまして、それぞれの委員からは御理解いただいていると認識しており、今後も引き続き、様々な御意見を踏まえながら、支援内容など、詳細について検討を進めてまいりたいと考えております。

質問

庁内における協議については、「川崎市犯罪被害者等支援庁内連絡会議」が組織され、有識者会議同様、4回の会議を実施し、庁内調整方法、支援内容や条例案について協議を実施してきたとのことですが、何故、教育委員会が関係部署に含まれていなかったのか伺います。

現実的に、犯罪に該当する”いじめ”が発生した本市において、教育現場においても被害者が生まれる可能性はあり、そういった児童生徒・ご家族に対する支援も欠かす事ができません。本来であれば、教育委員会も関係部署として、本庁内連絡会議に参加すべきだったと考えますが、見解を伺います。

答弁

庁内連絡会議についてでございますが、新たに施策を策定する際に調整が必要な部局及び直接給付に関係する部局をもって構成したため、教育委員会は委員としていなかったものでございます。

質問

犯罪被害者等支援条例を有する他都市においては、支援内容に“教育支援”が含まれる都市もあります。本市において“教育支援”を含めなかった理由を伺います。

答弁

支援内容の詳細につきましては、有識者会議での御意見のほか、他都市の状況等を踏まえ、今後検討してまいります。

質問

犯罪被害者等支援条例で先行する明石市では、昨年4月の条例改正とあわせて、「あかし被害者基金条例」を施行しました。同基金条例は、被害者支援に関する事業に要する経費に充てる事を目的としており、市民、各種団体又は事業者からの寄附を積み立てていくものとなっています。本市においても、同趣旨の取組が必要と考えますが見解を伺います。

答弁

被害者支援の基金についてでございますが、現在政令指定都市において導入している都市はございませんが、今後、先行都市の状況を確認するなど、調査研究を行ってまいりたいと存じます。

 

・代表討論

討論

議案第161号「川崎市犯罪被害者等支援条例の制定について」に対する賛成討論を行います。

先ず、我々に求められているのは、条例制定は勿論ですが、犯罪被害者の方々に寄り添った具体的な支援策を設けることです。我が会派は、これまで本条例の制定を強く求めてきた経過があります。その上で、以下申し上げます。

先ず、本条例案の策定経緯及びその目的についてです。本市は平成20年5月に「犯罪被害者等支援相談窓口」を設置し、運営を行ってきましたが、他都市と比較して相談件数が低い傾向にありました。その要因として、相談窓口の広報が不足していることや、犯罪被害者等支援に特化した市独自の施策内容の充実化が図られていないこと等が考えられたことから、平成30年12月以降、議会質問をはじめ、様々なやり取りや有識者会議等での意見を踏まえながら、本条例の策定に向けた検討を重ねてきたものです。

本条例案では、第1条で規定しているとおり、「犯罪被害者等の支援の基本となる事項を定める」ものであり、対象者等の詳細については、別途策定する要綱で定める予定であるため、条文において、対象を限定するような規定をおいてはいません。

次に、定義についてです。本条例において、犯罪被害者等とは、「犯罪等により害を被った者及びその家族又は遺族」と定めています。これは本条例の上位法となる「犯罪被害者等基本法」に準ずるものであり、本条例においても同様に定め、被害に遭った方の年代・性別等にて区分しているものではありません。しかし、修正案では、全ての犯罪被害者等を対象にしながらも、第8条第6号として「子どもに対する支援」を規定していることで、「第1項から第5項までは子どもには適用されないのか」、「第6号と同じ状況にある大人に支援は行わないのか」、「悪影響が現生じている子どもや悪影響を受けるおそれがない子どもに対する支援はどうするのか」という反対解釈が導かれてしまい、法的整合性を害するおそれがあります。

次に、12月9日に開催された文教委員会の中で、当局は、教育支援について、「今後教育委員会とも協議を進めた上で、条例原案を修正することなく、来年2月を目途に制定する要綱に中に教育支援を盛り込むことが可能である」と明言されました。

文教委員会の中で我が会派は、本条例制定に際し、登戸児童殺傷事件が一つの切っ掛けになっているにも関わらず、庁内連絡会議に教育委員会を入れることなく、「教育支援」の必要性について深い議論が行われてこなかったことは、大変遺憾であることを述べた後、「今後、教育委員会とも連携して検討をしていくとのことだが、今後の庁内連絡会議において『教育支援』が必要と判断された場合、現在の条例案を修正することなく、今後策定する要綱の中で、必要とされる支援項目を盛り込むことは可能か?」という質問を行ったところ、それに対し理事者からは、「教育支援などについては、本条例案では、『日常生活等の支援』とし、第8条に位置付け、犯罪被害者等が日常生活や社会生活を円滑に営むことができるよう施策を講じることとしている。
児童生徒の学びを支える教育支援としては、様々な内容のものが考えられるが、例えば、金銭的な給付を伴うものであれば、同条第1項第1号において、経済的負担の軽減を図るための『生活資金の助成その他必要な支援』となり、カウンセリングなどであれば、第2号の『心理的ケアに係る必要な支援』になると考えられる」とのとの答弁が示されました。

つまり、児童生徒が被害者となった場合の教育支援としては、さまざまなものが考えられるが、同条各項を根拠に具体的な支援を検討することができるということです。先程も述べたとおり、原案の立て付け自体が、そもそも条文において、対象を限定するような規定をおいてはいないことから始まり、修正案では、反対解釈が導かれてしまう結果、法的整合性を害するおそれがあるだけでなく、委員会では、今後策定される要綱の中で、教育支援を位置付けることが可能であると確認できた以上、原案を修正する明確な必要性が見当たりません。

一方で、学齢期における教育支援の必要性に関する議論がこれまで、行政内部で十分に行われてこなかった事は、各会派代表質問、委員会審査等にて判明した事実であります。よって、今後については、「当該児童に関わる関係機関との協議を十分に重ね、個々の児童に則した必要な支援施策を検討すること。」を趣旨とする附帯決議案を我が会派が提出し、協議の結果、みらい会派を除く賛成多数で可決すべきものと決したわけです。

以上、これまで述べた理由から、我々自由民主党川崎市議会議員団は、議案第161号川崎市犯罪被害者等支援条例案及び附帯決議案に賛成して、討論を終わります。