議会報告

令和4年12月7日代表質問

川崎市地球温暖化対策の推進に関する条例の改正について

2022.12.07

・ 川崎市地球温暖化対策の推進に関する条例の改正に向けた重要施策の考え方(案)について

質問

「子供たちが安心して豊かに暮らせる脱炭素社会に向けて」という副題を添え、令和4年度末ごろの条例改正を目指すとして、過日の環境委員会で説明がありました。地球温暖化対策の推進と、脱炭素社会の実現の必要性は世界的共通課題であり、本市としても一層の取組が求められることは言うまでもありません。ただし、課題が広範にわたり、多様な主体の取組が必要であることを考慮すれば、行政が負担すべき責任の定義を明確にする必要があります。また市民を巻き込むとするならばその内容や時期については慎重な議論を要します。

国の方針としては、市民生活に関連する家庭部門では、特にそのスケジュール感については、2030年度以降、新築の住宅・建築物についてZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能の確保とされています。太陽光パネルによる創エネに限らず、断熱機能の強化によりエネルギーを極力使わない施策のほか高性能設備による使用量削減の視点もあります。
なぜこのタイミングでの重要施策の考え方となったのか、またなぜ太陽光パネルを軸とした施策なのか、市長に今後の展望を踏まえて伺います。

答弁

(市長)
気候変動の脅威は益々増大し、世界各国や国内、また市内においても自然災害の激甚化という形で現れており、 今後さらに深刻化することが懸念されています。

このまま気温上昇が続いた場合、北極・南極の氷解等により地球全体が原状回復困難な状況に陥るとされ、その転換点は、現在420ppmである大気中のCO2濃度が450ppmとなった時点と言われており、現在年間2ppm程度の速度で増加していることを踏まえれば、今後数年間が正念場であって、早急な取組が必要と考えております。

本市においては、産業分野では臨海部企業とともにカーボンニュートラルコンビナート構想の実現に向けた取組にすでに着手しておりますが、このたびの「重要施策の考え方(案)」は、本市における最も大きな「再生可能エネルギーポテンシャル」である太陽光発電を活用し、特に民生系への再生可能エネルギーの積極的導入に取り組むため、新築建築物への太陽光発電設備の設置を一定義務づける制度を導入しようとするものでございます。

また、CO2削減のためには、こうしたいわゆる創エネの取組に加え、省エネの取組も両輪で進めることが重要であり、本年6月に公布された改正建築物省エネ法により、令和7年度から全ての新築の建築物に対して一層の省エネルギー構造が義務づけられることから、本市制度も同時期に施行できるよう取組を進めてまいります。

地球温暖化は全ての人の責任であるとともに、現在のみならず将来世代までもが犠牲を払うものであって、本市においては、安全安心な市民生活を脅かすとともに、産業衰退につながるリスクでもあると認識しております。こうしたことから私は、市民・事業者の皆様の御理解をいただきながら、脱炭素化のためにできうることを、できることから早急に、かつ、全力でオール川崎での取組を進めてまいります。

質問

本市は政令指定都市中、一人当たりの二酸化炭素排出量が最も多い都市である一方、その排出量の8割は市民の生活とは直接は関係のない産業部門による排出です。二酸化炭素削減量の負担に関する、民生・産業・行政の負担の考え方を伺います。

また本市の産業は国の基幹産業としての役割を担っています。国に対して、産業部門の削減要請について、量的・質的あるいは時期的緩和を求めないのか、見解を伺います。

答弁

(環境局長)
脱炭素化の取組についての御質問でございますが、温室効果ガス排出量の削減につきましては、2050年の脱炭素社会の実現は、産業部門だけでなく、民生部門や運輸部門など、すべての部門において温室効果ガス排出量の実質ゼロを達成しなくては実現できない目標と考えております。

このため、本年3月に改定した「地球温暖化対策推進基本計画」では、2050年の実質ゼロ達成を見据え、2030年度の温室効果ガス排出量を民生系で2013年度比45%削減と設定するとともに、産業系では50%削減、市役所では50%削減と設定したところでございます。

また、こうした産業系の目標設定や、目標達成に向けた5大プロジェクトである、(仮称)事業活動脱炭素化計画書・報告書制度につきましては、国との協議や、事業者の御意見等もいただきながら検討を進めてきたところでございますので、引き続き、国や事業者と連携しながら、産業系の脱炭素化に向けた取組を推進してまいります。

質問

想定する市民負担内容についての市民の理解についても重要です。多く寄せられる声の中には、既存の建築物についての設置義務があるのではないか、といった不安の声も寄せられます。市民負担の考え方、今後のその周知の方法について改めて伺います。

答弁

(環境局長)
この間寄せられました御意見では、市民の皆様の不安は、義務の対象範囲や住宅価格への影響、また設備そのものの信頼性などでございまして、とりわけ設備についてはネット上に誤った情報が大変多く、これらを総じて「負担」と感じられているものと認識しているところでございます。

そのため本市では、義務制度の内容とともに、設備の特性や経済性、生産から廃棄に係る情報、災害への対応など、正確な情報の発信に努めているところでございまして、それに基づき、市民の皆様に設置の判断をお願いしたいと考えているところでございます。

義務対象につきましては、これから建築される住宅はCO2排出ゼロを目指す2050年まで存在するなどとの考え方の下、新築の建築物のみを対象としているところでございまして、さらに、土地の形状、面積、近隣の建築物、また意匠など、日照や設備の設置条件が多種多様であることを踏まえ、義務対象者を住宅の購入者ではなく、一定規模以上の建築物を供給するハウスメーカー等とし、購入者が設備を設置しないことも選択可能な制度としております。

また、経済的な負担に関しましては、設備を自己所有する場合は30年の使用期間内において初期費用分が回収できるという試算があり、また、リースモデルやPPAモデル等の手法により初期投資額を軽減することも可能となっています。

市民の皆様には引き続き、こうした正しい情報をわかりやすく解説し、正しく御理解いただくためのQA集などを用いて周知するとともに、市民・事業者の皆様を対象とした情報発信や相談窓口となる新たな支援制度を検討し、市民の皆様の不安を解消できるよう取組を行ってまいります。

質問

現状では、当該施策に対応する市民向け補助金は、スマートハウス補助金が令和4年度予算で3500万円しかありません。年間3000軒以上の新築需要が想定される中、到底足りるものではなくなると考えられます。またそもそも脱炭素を期する技術は太陽光パネルの導入だけではありません。今後のスマートハウス補助金の補助内容の予算規模、検討の方向性とその時期について具体的に伺います。

答弁

(環境局長)
今回の条例改正に向けた重要施策の考え方を御審議いただいた、環境審議会脱炭素部会からは、「太陽光発電設備に関する各制度や経済性を見ると、初期費用分の投資回収は十分可能であると考えられ、設備設置に係る補助制度の拡充については慎重であるべき」という趣旨の御意見をいただいております。

しかしながら、補助制度により、設備の導入促進やレジリエンス強化の加速効果も期待できますので、条例施行時期を見据えながら、地球温暖化対策として、より効果の高いものとなるよう、制度の見直しを検討してまいります。

質問

先日の環境委員会で、設置された太陽光パネルの耐用年数が30年程度で、パネルの解体時期と延床面積2000㎡未満の戸建て住宅の建て替え時期が同時期になるのではないかとの環境局の見込みが示されました。仮に、建て替えず住み続けた場合及び延床面積2000㎡以上の建築物の集合住宅が30年以上にわたり使い続けられた場合、使用期間を終えたパネルの取り外し・廃棄に関して義務化を実施しようとしている本市はどのような対応を考えているのか伺います。

併せて、CO2削減に寄与する設備に関しては日進月歩でありますが、新たに太陽光発電設備より効率的で更なる効果を期待できる代替品が出てきた場合、太陽光発電設備を設置された方々が新たな設備に変更することが担保されるのか見解を伺います。

答弁

(環境局長)
はじめに、太陽光パネルの取り外し・廃棄についてでございますが、建て替えによる建物解体を行わない場合のパネルの取り外しにつきましては、新しいパネルや新たな技術の発電設備の交換費用に含まれることで、撤去費用が軽減されるものと考えております。

また、太陽光パネルの廃棄につきましては、市内や近隣都市に100%リサイクルを行う処理施設があり、適正に処理することが可能となっておりますので、建設業者や解体業者に対して、太陽光パネルのリサイクル処理についての周知を図ってまいります。

次に、代替品への対応についてでございますが、今回の条例改正に伴う、延床面積2千平方メートル未満の建築物、いわゆる中小規模建築物への設置義務制度は、建築物を新たに建築または供給する事業者に対して、一定量の太陽光発電設備の導入を義務付ける制度であり、市民に設置を義務付けるものではなく、最終的に建築主または住宅の購入者が判断し、設置について選択できるものを想定しております。

また、設備につきましては、現状では、太陽光発電設備を中心としたものと考えておりますが、今後の技術革新により、更なる効果を有する設備等が開発された場合にも、そうした設備を対象とできる制度となるよう検討してまいります。

質問

火災時の対応についてですが、消防隊員には周知をしている旨の説明は受けましたが、消防団には説明がないと伺っております。太陽光パネルだけでなく、常に災害時は通電火災に気をつけながら、消火活動にあたって頂いておりますが、改めて消防団に対する説明はどのように行っていくのか伺います。

また、破壊活動を行う場合についても伺います。

答弁

(消防局長)
先着消防隊等は、発災建物に太陽光発電設備が設置されている場合、蓄電システムの有無、発電能力、太陽電池モジュールや接続箱、パワーコンディショナーの設置場所等の状況を関係者から聴取し、消防隊や消防団等に周知して、情報の共有を図っているところでございます。

消火活動におきましては、消防職団員の感電や太陽光パネルの落下等が予想されることから、改めて、川崎市消防団長会定例会において説明し、情報の共有を図るとともに、消防署と消防団との連携訓練等において、感電を防止するために有効な放水方法等について周知してまいります。

なお、太陽光パネル等の破壊を行う場合には、適切な装備品を着装した消防隊員が活動にあたることとしております。

質問

関連して、市内の大多数を占める既存住宅への補助金拡充について伺います。

現行の太陽光パネル設置等の補助金制度は予算額も含め不十分な点が否めません。新築以外の既存住宅におけるリースも適用できるようにするなど、既存の補助金制度の拡充の意向について伺います。
国や県の補助金制度との兼ね合い、連携についても伺います。

新築住宅の太陽光発電の義務化のみでは大きな効果は見込めるはずもなく、既存住宅の補助及び、とりわけ蓄電池の設置の後押しこそが不可欠と考えますが、見解を伺います。

答弁

(環境局長)
既存建築物につきましても、太陽光発電設備の普及を誘導していくことは重要と考えており、新たな設備の設置手法などを含め、ニーズに合わせた制度とするとともに、国や県の補助制度とも合わせて利用できるようにするなど、より効果的な制度となるよう、検討を進めてまいります。

次に、蓄電池の設置についてでございますが、再生可能エネルギーのさらなる利用拡大に向けましては、太陽光発電などは、自然条件により出力が変動することが課題となるため、調整力となる蓄電池の活用が重要であるとともに、災害時におけるレジリエンスの強化にも資するなど、様々な効果があると認識しておりますので、その導入促進に向けた支援につきましても、検討してまいります。

再質問

地球温暖化対策における脱炭素の取組について改めて伺います。

まず、なぜ「太陽光パネル」の設置を「義務化」すべきなのかと言う点です。世界的に地球温暖化対策が必要であり、本市が脱炭素の取組に対して積極的であるとの姿勢には、我が会派としても賛同すべきものと考えます。

また、太陽光発電設備設置に関しては、義務は施工者にあること、全ての住宅が対象ではなく、新築住宅の一部が対象となること、また建築主は設置するかしないか、判断が可能であるとの答弁でした。

昨今のエネルギー価格の高騰が目立つ中、設備の経済性は魅力的なものであるという本市の認識です。生産・廃棄あるいは災害対応に関する正確な情報発信が必要であるとしながらも、市民にとって有用な設備であると考えている点も確認できました。

市民の皆様の環境意識の高まりもあり、各家庭等民生分野においても、クリーンエネルギーの導入は一層加速するものと考えられると言う予測にも違和感はありません。

一方で、本市の考えるように、太陽光発電設備が本当に魅力的であり、市民生活にとって必要とされるものであるならば、なぜ敢えて「義務化」という考えに至ったか、検討経緯と判断した理由について、改めて伺います。

併せて、建築主にとって選択可能の余地が大きく、結果として施工者を縛ることが難しい本制度は義務化と称するべきなのか、見解を伺います。

答弁

(環境局長)
本年3月に改定した「地球温暖化対策推進基本計画」におきまして、2030年度の再エネ導入目標を33万キロワットと設定し、5大プロジェクトとして「再エネ」「産業系」「民生系」「交通系」「市役所」といった分野ごとの重点事業を位置付け、2050年の脱炭素社会の実現を目指しております。本市におきましては、住宅・事業用太陽光発電設備のポテンシャルがあり、「民生系」の取組として、再エネ導入を加速化させるため、環境審議会脱炭素化部会に御意見をいただきながら、再エネ導入に係る義務制度の検討を進めてまいりました。

また、これまでの補助制度などによる誘導支援策では、太陽光発電設備が市内に十分普及していない中で、環境審議会の答申では、太陽光発電設備はCO2削減効果、経済性、レジリエンスの強化などの住民のメリットが見込めるとされたため、市民の皆様が正しく設置の適否を検討できる環境を作ることで、設置が一層促進されるとの判断をしたものでございます。

次に、義務という表現につきましては、今回の制度では、太陽光発電設備の導入の促進を強化するため、大規模建築物の建築主や、ハウスメーカー事業者、建築士に対し、担ってもらう新たな役割を明確化する必要があることから、「義務」という表現を使用しております。

再質問

次に、「義務化」して、実効性があるのか、と言う点です。事前のやりとりでは、建築確認時点で確認をするが、太陽光パネルの設置が無くとも、本市による建築許可等に影響を及ぼすものではなく、建築は可能とのことです。また太陽光パネルの設置に関して義務化しても、その後の維持や運用に関しても義務化されていなければ、実際の環境負荷への軽減効果は期待できません。また設置しないことに対するペナルティも定められていません。本制度が条例化された場合に、その実効性は担保されるのか、伺います。

答弁

(環境局長)
本制度の実効性についてでございますが、本制度は、ハウスメーカーなどの一部の事業者を義務対象者とするものであり、事業者が義務を適切に履行するためには、太陽光発電設備のメリットなどの、正しい情報を理解いただくことが重要と考えております。

そのため、本市といたしましては、今回お示ししている支援制度の枠組みを活用し、事業者に対する適切な情報発信や研修などにより、支援・育成を実施してまいります。

このような取組を通じ、制度をしっかり理解いただいた事業者が、住宅を購入する市民に対し、太陽光発電設備設置について適切な説明をいただくことで、結果として、太陽光発電設備の設置促進につながるものと考えております。

また、これらの取組にあたっては、川崎市地球温暖化防止活動推進センターや、専門的な知識を有する関係団体、本市が現在検討を進めている地域エネルギー会社などとの連携を検討してまいります。

再質問

次に、なぜ今かと言う点です。本年6月に公布された改正建築物省エネ法により、令和7年度から全ての新築の建築物に対して、一層の省エネルギー構造が義務付けられます。これに併せて本市でも同時期での施行を目指すとのことです。

改正省エネ法の効果は、現段階で本市の地球温暖化対策推進基本計画上にも位置付けられておらず、CO2の削減量も織り込まれておりません。

改正省エネ法は、あくまで省エネを主眼としたもので、本市の独自の取組として創エネを組み合わせたいという積極性は評価できます。一方で、今後の改正法の施行、環境技術の発展、さらには自家で消費するクリーンエネルギーの選択が可能となることも想定されます。本施策が施行されれば、耐用年数30年間の市民の選択機会の喪失にもつながり得ると考えられます。なぜ今、太陽光パネル設置の義務化に舵を取る必要があるのか、本市の考えを伺います

答弁

(環境局長)
スケジュールについてでございますが、地球温暖化対策は喫緊の課題であり、国や世界の定める2050年のCO2削減目標の達成に向け、一自治体として様々な取組を進める必要があると考えているところでございます。

本市は産業系のCO2排出割合が他都市に比べ多い特徴がございますが、産業系だけでなく民生系などそれぞれの部門において、あらゆる手法を活用しながらその削減の取組を進めることが重要と考えておりまして、本制度につきましてもその一つとして早期の導入を目指しているものでございます。

再質問

本施策の有効性について本市は、民生家庭部門において、2030年までに、98万トン、2013年比で46%のCO2削減を目標としています。

一方で、その削減量の大部分は国や企業等による努力による部分が大きく、本市の民生家庭部門では26万トンの削減を目標としています。本施策によって1年当たりどの程度のCO2削減量を期待できるのか、またその削減量は本市の脱炭素の取組、とりわけ市民負担を義務化した施策として十分に有効であるのか、見解を伺います。

答弁

(環境局長)
本制度の有効性についてでございますが、民生家庭部門において必要とされる2030年度の温室効果ガス削減量の目安につきましては、2013年度比で98万トン削減と試算しておりますが、2013年度から2019年度までの6年間で、すでに約37万トン削減しております。

さらに、将来的な電力排出係数等の動向などの社会的要因として、2030年度までに52万トンのCO2削減が見込まれることから、残り約8万4千トン分が不足している状況でございます。

本制度の実施によるCO2削減効果につきましては、現在の想定で2030年度時点での年間削減量は1万4千トンでございまして、民生家庭部門において追加で必要な削減量の約17%に相当するものであり、目標達成に大きく資する制度であると考えております。