議会報告

令和2年12月14日第6回定例会一般質問

大丸用水と多摩川について

2020.12.14

令和2年12月14日第6回定例会で質問しました。

質問

大丸用水ですが、現在、国主導で頭首工工事の計画をしています。これは多摩川緊急治水プロジェクトの一環ですが、本工事が本市の水害リスク軽減効果について、本市の認識を伺います。

答弁

本工事は、多摩川緊急対策プロジェクトに位置付けられており、多摩川の河道断面を確保し、令和元年東日本台風と同等規模の洪水が起こった場合でも洪水を安全に流下させることを可能にするためのものであり、三沢川下流域及び大丸用水流域の水害リスクを低減させることに直結するかは不明でございます。

(上原)

国の事業で、洪水を安全に流下させるとの答弁でした。洪水を流下とは、多摩川本流の話かと思います。

本市も流れる大丸用水のプロジェクトとはいっても、主に稲城氏、府中市の洪水リスクを低減させることが目的で、本市には大きな影響は考えにくいことかと思います。

(上原)

図の中で、右上部分大丸用水堰と書いてございまして、灌漑用水である大丸用水に取水するための可動堰があります。

これと図にお示しした取水口を多摩川沿い200メートルほどでしょうか、上流に移築し、新しい取水口からボックスカルバートで現在の取水施設に接続するという工事が、大丸用水頭首工工事です。

図

質問

これに連動する形で、進もうとしている、大丸用水の取水施設について伺います。

こちらの図では、取水口・市内向け水門・排泥水門とされているものですね。本市として、先年の三沢川下流域における水害の一因として、多摩川から大丸用水への水の流入を挙げておりました。

本市としても、大丸用水の利水組合である大丸用水土地改良区に対して、本年6月に要望書を提出しました。その内容について伺います。

答弁

令和元年東日本台風の浸水被害を踏まえた検証により、大丸用水排泥施設水門から多摩川の水が流入していたことが判明したことから、施設管理者である大丸用水土地改良区に対し、本年6月に、今後の浸水被害の低減に向けた取組として、多摩川水位下にある排泥施設水門開口部の閉塞など、多摩川からの流入防止対策や、大丸用水に関する水路網の資料提供及び調査への協力などについて、要望したところでございます。

(上原)

先日、稲城市に視察に行ったところ、大丸用水土地改良区としては、排泥水門が鍵ではなく、むしろ同じく排泥施設の市内向け水門が要所であることが確認されました。

実際見に行って、お話を聞いてきました。

現在の堰と取水口は無事に動いているようです。

取水の計画量を取水するため、実際稼働しているところも確認できました。

ところがですね、右側が排泥水門といって、水を取り込むうちに一緒に混入する、砂や草木を吐き出すための門です。

写真をご覧いただいてわかる通り、 水門の上が開いており、これを超える水量があると越水してしまう、ということです。本市は、これをかさ上げてほしいと要望したわけです。もっと重篤なのが、左側の市内向け水門でして、これは完全にさび付いて動かない、ということなんです。

質問

先年の台風では経年劣化もあって、手動での操作ができなかったこともあり、稲城市では、市内向け水門の機能を復帰し、さらに電動化し、改築したいとの事です。

本市に対しても、10/13付で、6月の本市からの要望に応える形で、要望書が提出されました。本市の対応方針について、伺います。

答弁

本市の要望に対しまして、本年10月に、排泥施設水門の改修が完了するまでの応急措置の実施等について、 回答をいただいたところであり、この回答と合わせて、大丸用水土地改良区からは、排泥施設水門の改修等にかかる費用について、用水の受益面積の割合に応じた負担を求められているところでございます。

土地改良区が計画している水門改修につきましては、要望されている費用の詳細な内容を、土地改良区に確認する必要がございますが、大丸用水の適切な管理は、本市にとって重要なものと考えておりますので、水門の改修が行われるよう、現在、庁内で費用負担に係る協議・調整を行っているところでございます。

(上原)

水の問題は、上流が重要なのは言うまでもありません。本市から上流を何とかしてほしいと要望を出して、これに対して、上流にある大丸用水土地改良区さんが前向きな取組を提案していただいているわけですから、ぜひ前向きな姿勢でお応えすべきと考えます。

細かい話を申し上げれば、大丸用水土地改良区から の要望通りとすれば、国・都・県で92%負担し、残りの8%を稲城市が負担する計画とのことです。施工は令和4年とのことですが、詳細設計は令和3年であり、本市議会同様、稲城市でも予算要求が必要です。

ご答弁では、前向きに進めていただいていることが期待できると考えられますが、いまのうちに、しっかりと受益者負担についての本市としてのあるべき姿勢を整理していただきたい点、要望いたします。

質問

この歴史ある大丸用水ですが、この大丸用水は今でも農業にとっての重要なインフラです。2019年には、灌漑用水として、国からも認められているところです。

左が三沢川と右が三沢川に流入すると考えられるエリアにおける、大丸用水の水路です。

お分かりの通り、相当細かい目の網状になっております。かつて農業が盛んであった分、それだけ細かく地域を網の目状に網羅していることから、雨水を集めてしまうという事実があります。大丸用水流域のこのエリアは、鉄道を中心に、とても交通利便性が高いこともあり、宅地化が進行している地域でもあり、用水路への雨水流入の増加が懸念されます。

昨年の三沢川下流域の災害を踏まえると、長期的な 視点での本水路の在り方についての議論も必要かと思います。そこで、まずは灌漑用水としての基本に立ち返って、現在の農業用水としての利用状況について、伺います。

答弁

大丸用水は、多摩川から取水し、稲城市から多摩区内を流れ、三沢川に排水されており、稲城市及び本市農業者が組織する大丸用水土地改良区が農業用水として利用しているところでございます。

利用状況につきましては、本市における大丸用水土地改良区の組合員は、現在28名でございまして、平成25年4月時点の33名と比較すると減少していますが、引き続き、水田、畑のほか、ナシなどの樹園地において、同用水を利用しており、農業上重要な施設であると伺っております。

(上原)

10/28には、多摩区により、本市の大丸用水の水路網調査も始まっております。

国の京浜河川事務所によると、9つある本流には200もの支流があり、総延長は70キロにも及ぶとのことです。

現況で本市が把握している水路網は昭和62年のものであり、利水の観点からは、水路網調査と一体的に、農地としての利用実態の把握と、水路網の精査が必要と考えられます。

先ほどの水路に、当該地域の生産緑地をプロットしたものです。

本市でも農家数は漸減傾向、不要な水路が存在する可能性も、否定できないことがわかると思います。

質問

大丸用水の文化面での重要性についてですが、地域では、歴史的にも重要な水路であると考える市民は少なくないと考えます。

二ヶ領用水は本年3月に国の登録記念物に登録されました。二ヶ領用水と異なり、大丸用水は、本市には流域の一部が存在するのみですが、大丸用水の文化的価値に対する本市の認識について伺います。

答弁

大丸用水は、南武線「南多摩駅」に近接する稲城市大丸から取水され、稲城市域一帯の水田を潤した用水でございますが、その一部は現在の川崎市多摩区に位置する菅や中野島地域まで流れ、二ヶ領用水からの水の供給を受けなかった地域の水田を潤していたものでございます。

正確な開削時期は不明となっておりますが、江戸幕府が行った大規模な治水政策の一環として、二ヶ領用水とほぼ同時期の近世初期に開削されたと推定され、橘樹郡と多摩郡にまたがった村々が共同で利用していたなど、 地域の歴史・文化を理解する上でも意義深い用水であると考えるところでございます。

質問

文化的価値が認識されているのであれば、残していく方法についても考えなければなりません。

そこで、他の市や、二ヶ領用水のように、親水利用はできないのか、伺います。

答弁

稲城市内の大丸用水や本市の二ヶ領用水では、水辺の楽校などによりガサガサ体験や魚つかみ等環境学習などの親水利用が行われておりますが、市内の大丸用水は二ヶ領用水のように水と親しめる整備がされていないことから、環境学習などの親水利用につきましては、難しい状況でございます。

(上原)

稲城市では、積極的に、親水利用に取り組んでいます。

そもそも大丸用水土地改良区さんの事務局も、稲城市ですし、そこは主体的に取り組まれてきたのだろうと思います。

これは稲城市の大丸用水親水公園の様子です。

堀や沿線も整備されていることもさることながら、ここではところどころにポケットパークが設置され、憩いの場となっているとのことです。

また、この利水組合は、稲城市だけでなく、川崎市の農家さんたちも参加していて、自発的に水路の掃除や景観維持に努めていただいている事実があります。

一方で、我が川崎市は、この用水路に関しては、あまり積極的な整備をされているわけでなく、そもそも整備計画もたっていませんね。ぜひ文化的価値を認め、大事にできるところは大事にしていくべきと考えます

質問

文化的にも重要で、都市農業振興のためにも、重要と確認されました。また現在の大丸用水は、物理的には親水利用が可能な状態にいないこともわかりました。

一方で、昨年の被災から、水害リスクの低減に向けては努力が必要です。 本市における大丸用水に関連する、その流域の水害リスクの低減の取り組みについて伺います。

答弁

大丸用水におきましては、令和元年東日本台風に伴い発生した浸水被害に対して、検証委員会の結果を基に対策を進めております。

今期台風シーズンまでの短期対策として、三沢川からの逆流防止のための仮設止水板の設置、内水処理を目的とした移動式ポンプの配備、水位計とカメラの設置等を行いました。

また、稲城市に要望し、大丸用水取水口排泥施設内の、市内向け水門の仮設止水板が設置されたところでございます。中期対策として、神奈川県により大丸水門の機能回復工事が行われております。

現在は、大丸用水から浸水地域への流入量低減を図るため、稲城市と連携して大丸用水の上流で水を分散させる取り組みを調整しているところでございます。

また、中長期対策として、水路網調査及び内水対策の検討を、引き続き関係局や稲城市と連携し実施してまいります。

(上原)

大丸用水については、流入を減らし、また図のように分散させる取り組みが前向きに進んでいることが確認されました。

特に、市内外の水路各所の分水試験を繰り返し、特定地域への流量負担を軽減する取り組みについては、地道な調査活動のたまものといえ、高く評価すべきと考えるところです。

質問

これで大丸用水流域にとっては、上流での対策、流域における流量分散がなされる見通しがついたといえるわけで、当該地域の浸水リスクに関しては、大きなところでは三沢川水門の閉門時の内水氾濫リスクがあります。本市の認識を、伺います。

答弁

大丸用水や三沢川の増水は、稲城市等上流部の降雨により影響を受けるもので、水門などの改修で一定程度のリスク低減が図られると考えておりますが、一般的に、水門を閉鎖した場合、降雨の状況によっては、浸水被害が発生するリスクはあるものと認識しております。

(上原)

最後に意見を述べます。

水門を閉めれば内水氾濫のリスクを伴うのは、当たり前といっても過言ではありません。危機管理監としてもそのようにご認識いただけていることが確認できました。

現在、三沢川下流域では、特に多摩区と建設緑政局の河川課が取りまとめを行いつつ、他の自治体への働きかけと調整を行っているところです。結果として、三沢川下流域を襲った浸水被害のリスクは、上流の小河内ダム、大丸用水取水を含め絶対的水流量は減少、そして流域においても、特定地域への水害リスクを分散させる取り組みはなされていると思いますが、やはり水門閉鎖と、内水氾濫リスクの低減のための、排水方針を要するとことかと思います。

市内の5つの排水樋管には、閉門時の排水機能が準備されましたので、河川に関しても同様の水門閉鎖時における、市民への警報の在り方などにも、少なくとも現時点で国任せで課題が山積しているかと思います。

今後は、私は、危機管理室に大いに期待しておりまして、本市の避難所や当日対応のみならず、本市の直面する危機に対して、真正面から向き合い、各局に要請できるような組織の在り方を期待しております。

またリスクを分散させるための多摩区の地道な取組と、定常的な業務以上に奮闘されている建設緑政各位に心より感謝申し上げたいところです

引き続き、調査研究提案をさせていただき、前向きな議論を今後も展開していただけることを期待しております。