議会報告
令和2年11月5日総務委員会
川崎臨海部投資促進制度(案)について
2020.11.05
令和2年11月5日総務委員会で質問しました。
質問
資料のいわゆる奨励金の額についての制度案①当該土地で新たに製造業が操業を始めた場合、土地売却企業に奨励金を交付するというのは、いまいち釈然としないので、背景を教えていただきたいのですが。
答弁
それではまず、制度2を策定する必要性の背景等を御説明させていただきます。
川崎臨海部は、基本的には製造業が中心ということになってございますので、多くの製造業が立地しておりますが、近年、土地の売却というのが徐々に出てきております。売却される場合、あくまでも全体ということなんですけれども、やはり製造業が製造業に売却されるというケースは非常にまれでございまして、多くの場合は物流等に売却されるという実態でございます。現実的に物流のほうが相場、市場価格よりもかなり高額で購入している。それだけ物流の進出意欲が旺盛な状態ということです。
我々の考え方といたしまして、物流は川崎港にとってはとても大事なものでございますので、それを否定するものでは一切ございません。ただし、やはり石油化学コンビナートでございますので、製造業が立地し続けることによって相乗効果を生み出している、これが川崎臨海部の強みでございます。ここが、製造業が抜けてしまって違う産業になってしまうことで、結果的に臨海部のシナジーといいますか、連続性みたいなところが途切れてしまう。
一方で、物流のほうに関しましても、例えば製造業が物流と密接な連携があるわけでございます。製造品をそのまま出荷するためには物流業が必須でございます。
ただ一方で、近年進出してきている物流の多くは、いわゆるeコマース系と申しますが、製造業と直接リンクしていないような物流業が多く入ってきております。そして規模もかなり巨大でございます。数万平米クラスの敷地に立地してくるというところでございますので、こういったものが立地することによって周辺の製造業の操業環境が悪化してしまうといったような事態も生じております。そういった事態に対応するためにということで、将来的な土地利用の在り方みたいなところを、我々がこうすべきと強制的にするものではないんですけれども、事業者の方と、なるべくそこが製造業から製造業に売却されるようにという協議を実施したいと思っております。
実はこれは事例がございまして、相模原市ですとか厚木市で既に実施しております。課題認識は同様でございます。あちらは内陸部の工業地帯でございますけれども、結局そういったところが売却されてしまって、工場以外のものが建つ。具体的に言うとマンションとかでございますけれども、そういうものに対応するために売却企業に対してインセンティブを与えることによって、何とか製造業から製造業に売却していただけないかというところが背景にあるものでございます。
(上原)
要は製造拠点としての継続性を保ちたいということで、どっちに奨励金を出したほうがいいのかとなった場合に、売り手企業さんに出したほうがその継続性が保たれるであろうということですね、ほかの市の事例と併せて。よく分かりました。
質問
達成目標の設定の話ですね。年間60億円、5年で300億円の新規投資を増加させた場合、新規投資を促した場合というのがこの場合正しいですね。20年間の累計税収額は現状を上回る2.3億円増と書いてあるんですけれども、この新規設備投資を促すための補助金、奨励金というのが多分一番最初の変数として存在しますよね。こっちのほうのシミュレーションというのはされていないんですか。
要は、補助金があって、設備投資があって、その結果として税収が増えるわけですね。だから、ここの部分とここの部分を比べないと、その投資が有効か否かというのは比較できないですよね。
答弁
この補助制度によってどの程度の税収効果が出るのかということを我々の中でシミュレーションさせていただいております。なかなか個別企業の課税額というところは秘匿性が非常に高いものでございますので、可能な限りのデータを集めているところでございますけれども、まずそうした結果、現状で川崎臨海部において年間平均で約147億円の投資がされているというところが分かりました。これは高度化に資する投資でございます。あくまでもシミュレーションということでございます。
現状147億円、つまり何の制度がなくても147億円は投資されているわけでございますので、この制度をつくった来年以降に関しましては、これを超えなければいけない。
具体的にどこまで超えると、補助金を支出したとしてもその分を税収で賄うことができるか、こういう形でシミュレーションを私どもはさせていただきました。
まず60億円と設定したのは、これは逆算でございます。幾ら足せばプラス・マイナス・ゼロになるのかと順々に計算していったときに、60億円でちょうど損益分岐点になるというところでございます。
ただ、若干の2.3億円プラスにはなってございますけれども、20年間で2.3億円でございますので、これだけを見てしまいますと税源培養効果としていかがなものかということでございます。ここはあくまでもボーダーとして設定させていただいておりまして、我々が達成目標として目指すべき額なんですけれども、これを122.6億円と設定させていただきました。この122.6億円の設定でございますけれども、先ほど言った年間投資額というのが年間1.2件で147億円という額になっております。これを1件に割り返しますと122.6億円となります。つまり、今、年間1.2件147億円だったものを、この制度を活用することによって年間2.2件、都合269億円に上げることによって、ここにお示ししているような税収効果が達成できるということが判明いたしましたので、こちらを我々の達成目標という形で設定させていただいたということでございます。
(上原)
これは結局損益を既に反映した状態でプラス2.3億円という表現をされているということはよく分かりました。
質問
最後に、検証する内容のところで、制度1、補助事業ごとの税収効果、川崎臨海部の各年度の税収を算出し、実質収支の増収効果を確認するとあるのですが、これについてもう少し詳しく教えてください。
答弁
本制度は、補助制度を使う――先ほども申し上げましたが、この基本的な目的は、川崎臨海部の企業の産業競争力を強化して、今後もここで操業を続けていただく環境をつくるとともに、市の活力にも寄与するということで、その両輪をいかにしてクリアするかというところでございます。
その効果測定でございますけれども、企業がここでずっと操業していただければ、例えば、税で言いましても法人市民税ですとか事業所税あるいは固定資産税、それだけではなくて、雇用あるいは生産の増加に伴うあらゆる経済波及効果が見込めることではございますが、そこは若干不確定なところもございますので、今回の効果は、あくまでも固定資産税一本で、固定資産税だけで見たとしてもきっちりペイできる、回収できるというところを我々の目標として設定させていただきました。
その上で、ではそれをどういうふうにはかるかということで申しますと、一義的には臨海部からの税収がどれだけ上がるか、これに尽きるわけでございます。ただし、臨海部からの税収というのはいろいろなものがございますので、景気の動向ですとか、あるいはこういったコロナ禍での対応とかということで、多面的な部分で上下するというところがあります。
なので、一義的にはその税収効果を測定するとともに、申請いただいた設備投資がどれだけの税収を生み出すのかというところも併せて試算しようかと思っております。その2本立てでこの制度の効果を検証していきたいと思っております。
(上原)
評価基準は固定資産税一本で行くというニュアンスなんですけれども、冒頭おっしゃられたように、重厚長大産業で多くの雇用を生み出してきたという側面があって、その方々が住んでいる地域というのがあって、そこで個人の固定資産税になって、個人市民税も持ちますよね、消費も喚起されますよね。なので、多くの人がそこに通い続けたという事実はやはり無視し切れなくて、仮にですけれども、今の流れで言えば、製造業で高度化するとなると自動化が進んでいくことになります。そうすると、雇用は当然落ちるということになるので、そこの整理も、もちろん今回の奨励金制度に関しては固定資産税一本でという評価も間違ってはいないと思うんですけれども、別の側面、雇用と市内消費がどれぐらいのインパクトを与え得るのか。それがどのような形でどれぐらい進んでいるけれども、川崎はどのくらい保っていたんだということですよね。
要は、もう世界全体として自動化は進むわけですから、ある程度はしようがないと。その中でもうちは雇用をこれだけ守るんだよという意思表示がどこかの部分で足されていったらいいなと思います。