議会報告

令和2年6月25日第4回定例会 一般質問

川崎市の投資の考え方について

2020.06.25

令和2年6月25日第4回定例会 一般質問で質問しました。

質問

本市の投資についての考え方を確認したいと思います。今、自治体はどこもそうだと思うんですが、単式簿記で分かりにくく投資余力をはかるのもなかなか難しいと思いますが、企業会計的手法による財政状況を参考にすると、自治体間の比較であったりとか債券発行体としての魅力であったりとか、その横比較も簡単だと思います。法にのっとって作成された最新版の企業会計的手法の結果は平成30年度版と、決して現状の川崎市財政を反映していませんが、長期的な資産の在り方を検討するには大いに価値があると考えられます。本市の事業成立の流れを見ますと、市民に意義のある事業を担当局から投げかける形で予算確保がなされますが、仮に投資の考え方にのっとれば、財政主導での投資とその狙う効果の設定についての協議も必要と考えます。また、他都市との比較で見れば、1人当たり資産や負債、その弁済額を踏まえると、どの程度の回収率であれば、どの程度の投資が可能なのか方針を持つことはできるはずです。そこで、本市での投資実行に当たっての事業選択について伺いたいと思います。

答弁

投資事業についての御質問でございますが、本市におきましては、持続可能な行財政基盤の構築に向けて、その指針となる収支フレームに沿った財政運営を行うとともに、財政状況を的確に把握するための各種財政指標を設定してございます。将来に向けての投資につきましては、このうち中長期的なプライマリーバランスの安定的な黒字の確保や市民1人当たりの市債残高、実質公債費比率、将来負担比率、将来負担返済年数といった財政指標を注視しながら、計画的な投資を進めているところでございます。また、民間における投資判断の指標である投資回収率につきましては、投資額に対する利益の割合を示す指標であると認識しておりますが、行政におきましては、経済的価値のみで全ての投資事業に係る意思決定を行い得るものではございませんから、財政状況や事業ボリューム、事業効果等のバランスなどに加えて、一部の投資事業におきましては、BバイCなどの指標も勘案するなど、様々な観点から検討し、事業選択を行っているところでございます。以上でございます。

(上原)

実は、今回はずばり投資可能な金額規模みたいな形でお聞きしたかったのですが、現況では収支フレームにのっとった投資経費をコントロール、この方法論のみにとどまった答弁をいただいているところでございます。川崎市は金がないと言いますが、川崎市は一体幾らの投資まで可能なのか。家計でも自宅購入であったりとか、企業会計でも大型設備投資について収益性と資金繰りを踏まえて資産をどの程度持つべきなのか、その資金調達はどうあるべきなのか、これに向かってバランスシートの変化の許容範囲を考えるのは普通のことですし、市民はこうした疑問をお持ちになることと思います。金がないという言葉そのものもとても多面的な話でして、大きくキャッシュフローと経費を分けて考えるべきですし、資本の増減の話なのか、資本の多い少ない――多寡の話なのか、もろもろの議論で切り分けて話がされていない場面に、この1年たくさん出会ってきたところでございます。現状の本市は、有能な職員の皆様が明文化しないまでも、こういったバランス、投資の概念というフレームワークというのは表面的には用いておりませんが、しっかりと把握されているように接していて感じるところでございます。

 ここでディスプレーをお願いいたします。これは、森記念財団というところがやっている都市戦略研究所という民間組織が毎年公表されています日本の都市特性評価という調査がありまして、それの内容なんですが、これを無理やり合計値をつくって、ランキングをつくったところです。そこでは都市の特性を多面的に評価した尺度なので、ある意味、都市能力指数と言ってしまっても構わないのかなということで、とある意見として取り入れさせていただいたところでございます。これを順位づけしてみると、川崎市は政令指定都市20市のうちで17位となっております。民間の一調査とはいえ、都市能力が高いということはそもそも財政がさぞかし健全なんだろうと、京都とか福岡とかを見てみたんですけれども、どうやらそうでもなくて、これは横軸が財政力指数で、縦軸がいわゆる都市能力という、ここで勝手に規定しているものなので、正確なものでもないですし、1個の参考でしかないんですが、財政力が悪くても、どうやら都市能力というのは高く評価されています。企業会計的手法から出てくる指標に一定の関連性が見えないだろうかということで調べましたところ、案外シンプルでして、これも統計的に正しいものだというよりはあくまでグルーピングしてみたというだけの話なんですが、川崎市よりも都市能力が高いと評価されている都市を並べてみたところ、財政力指数が極端に低いというほどではなくて、極端に低いところはそもそも都市能力も低いんですが、資産額が単純に大きいところ、もしくは、これは意外だったんですが、自己資本比率が低いところ、いわゆる財政に対してレバレッジを大きくかけているところのほうが評価が結果的に高い。一つの調査なので、全てがこれだというわけではないんですが、そういう示唆もあったわけでございます。そもそも自己資本比率が高いほうが、将来負担を考えても評価は高いはずなんですが、それを上回る実質的な機能が高いという評価がその裏には考えられるんじゃないかと思っています。自己資本比率みたいなところで借金を膨らませると将来負担比率がどうだとか、公債費が膨らむ分を利用者負担でカバーすれば投資が可能じゃないのとか、ほかの政令市は1人当たり指標がこうだからどうなんだとか、川崎市も健全と言える範囲内で資産規模を大きくできないかということを今回御提言申し上げたかったんですが、なかなかそういう議論にはなりませんで、ぜひこれから企業会計的手法というのも、せっかくつくっていらっしゃるので、一つの参考にされてハンドリングをしていただけないかとお願いを申し上げます。

 以下、経済的な要望をいたします。1点目は、資産マネジメントの取組を推進すると本市のバランスシートの在り方が変わるはずです。バランスシートの在り方が変わると、当然、市債発行の余地なども、市長もIRを大変頑張られていると思うんですが、変わると思います。これまでは資産マネジメントの結果としての財務指標を設定することなく資産マネジメントをしてきた本市ですが、今後は目標となるバランスシートの在り方であったりとか、その達成時期を明確にした計画の策定をお願いしたいと思っております。第3期取組に関しては、結果的にどう財務に跳ね返ってくるのかというのも、しっかり把握というか、目標立てをしていただければと考えております。2点目は、基準財政需要額と実際の市民の要望の精査に関してです。市域の小ささで財政需要が低減している、小さく見えているというふうに算定されてしまうことが多いんですが、一方で、ほかの市と比較しても、都市部に近い本市だから必要な観点というのもあろうかと思います。ほかの都市と比較した1人当たり資産や負債の小ささを踏まえますと、本市の財政需要が過小認識されている可能性も否定できない。ほかの都市と比較して市民1人当たり資産額も小さく設計されている可能性も否定できません。単純な収支バランスに議論を終始させることなく、市民の皆様に潜在する需要額を見詰めた上での資産マネジメントの推進をお願いしたいと思います。3点目ですが、資産の在り方と同時に、間接的に付随する追加的な行政コストと一体的な管理をお願いしたい。例えば、先ほどの上下水道局でのフロンタウン生田の底地の賃借料が上下水道局に納められますが、本市としては建設緑政費の増にもなるわけでして、一体的な把握をすることでこの転用が有用なものであるということを対外的に示しやすいのではないかと思っております。以上です。