議会報告

令和1年12月13日第5回定例会一般質問

多摩区構想の交通と都市防災にかかわるインフラ部分について

2019.12.13

令和1年12月13日第5回定例会一般質問で質問しました。

(上原)

都市計画マスタープラン多摩区構想の交通と都市防災にかかわる、主にインフラ部分についての質問となります。簡便のため、以下、多摩区構想とさせていただきます。

今回議会は、令和時代の幕あけとなる令和元年最後の議会となりますが、令和9年には、東海道新幹線のうちの大都市間移動を主とするのぞみの役割を一部負担し、移動時間を大幅に短縮させるリニア中央新幹線の開通が予定されています。その開通の際には、川崎北部の市民の皆様にとってはアクセス口になるほか、観光客の誘致による経済効果が期待されるところでございます。

令和27年には大阪市までの全線開業が予定されておりまして、これを踏まえますと、長期的な視野での鉄道、道路等のインフラの整備や観光以前に当たり前の安全・安心を備えたまちづくりに向けて着実な対策を講ずるべきと考えます。このリニア中央新幹線の正式認可は平成30年3月、もう既におりておりまして、一方で、私が今テーマとさせていただきます多摩区構想は本年3月に改定されたばかりのものですので、既にしっかり議論はされていると思いますが、大きな変化に向けて着実な準備に歩を進めていく必要があると考えまして今回の質問のテーマとさせていただきました。

また、先日の台風19号の被災の影響の観点から最も重要となるであろう被災時の医療供給体制についてもあわせて伺います。

質問

多摩区構想分野別の基本方針Ⅱ交通体系にうたわれている鉄道網の整備について伺います。多摩区構想の鉄道網の整備方針には3点掲げられており、第1に鉄道網の強化が上げられているところでございます。その中には既存鉄道路線の機能強化を促進するとあります。これに関連し、現在事業化され、進められている南武線駅アクセス向上等整備事業の進捗状況について伺います。

答弁

初めに、稲田堤駅につきましては、本年5月に地域の皆様へ隣接ビルの解体等に関する工事説明会を開催し、令和2年2月ごろの完了に向け、現在解体工事を進めているところでございます。その後、本体工事に着手することとなりますので、施工計画を策定した段階で地域の皆様へ施設整備に関する工事説明会を開催する予定でございます。

次に、津田山駅につきましては、本年6月に橋上駅舎が完成し、北口の一部を使用開始したところでございます。また、南口へのアクセス通路等につきましては、詳細設計を踏まえ、鉄道への影響について現在JRと協議を行っているところでございます。

(上原)

南武線駅アクセス事業については、津田山駅の課題にしっかりと取り組んでいただくほか、JR稲田堤駅に関しては、まずは順調と確認されました。多摩区内各駅、例えば中野島駅、宿河原駅につきましても、事業化される前に詰めることのできる議論はあらかじめ適切に議論していただくことを希望いたします。

質問

道路網の整備について伺います。

多摩区構想の道路網の強化の部分には選択と集中という文言が見られ、これをもとに幹線道路網の整備が優先され、加速されているといった認識でおります。平成28年3月に策定された第2次道路整備プログラムにあるように、現在事業化されている世田谷町田線は先行して進められていると伺っております。世田谷町田線の整備に関する進捗と見通しについて、登戸工区、生田工区、それぞれ伺います。

答弁

登戸工区につきましては、多摩水道橋交差点から登戸郵便局北側交差点までの延長約820メートルの区間において事業を実施しており、現在の橋梁に並行して新橋の整備を進めているところでございます。現在、JR南武線をまたぐ部分の橋梁架設工事について、JR東日本と工事施行協定を締結し、本年9月に工事着手したところでございまして、橋梁工事や道路築造工事などの整備を進め、令和3年度に新橋が完成する予定でございます。

その後、登戸陸橋の4車線化に向け、現在の橋梁の表面整備とともに、耐震対策等を実施する予定としております。また、生田工区につきましては、東生田小学校付近から生田大橋付近までの延長約540メートルの区間において、幅員20メートルに拡幅整備する予定でございます。当該工区は、第2次道路整備プログラム後期の令和4年度から令和7年度の間に着手する予定の路線として位置づけており、具体的な着手時期につきましては、本プログラムの進捗状況を踏まえ、決定したいと考えております。

(上原)

一見、完成間近に見えております登戸陸橋ですが、肝となる南武線に差しかかる部分の工事はまだ着手されたばかり。そうはいっても完成が見えているということ、生田工区についても整備プログラムにのっとって順調に進む見通しであることを確認させていただきました。多摩区内の鉄道道路整備については、少なくとも事業化されている点についてはしっかりと取り組まれ、考え方も整理されているという認識でございます。

多摩区構想はとてもいい内容になってございまして、その一方で、事業化されていない部分での課題もまだ残っているかと思っております。例えばさきに出ました稲田堤駅の周囲で申し上げると、多摩区構想の中には駅周辺の交通環境の整備が上げられてはいますが、現状ですと、京王稲田堤駅北口とJR南武線稲田堤駅の間の乗りかえ客が道にあふれ返る時間帯がございます。保育園の送り迎えであるとか、通勤車両またはほかの市からの迂回走行などで交通安全に支障が出ている箇所が見られます。他駅に関しましても、このような課題の抽出に至っていない現状があると想定されております。

詳細設計段階となって協議されている内容が津田山駅にございましたが、事前に段取りできる部分もあるかもしれません。土地収用などの地権者協議もその一つでございます。現在事業化されている、もしくは事業計画されている交通網、道路整備網をきっかけに、駅周辺における歩行者動線の問題点の把握、そして安全で快適な動線の確保に向けた方策、さらには適切な将来予測をした上で、用意周到に取り組んでいただけるよう御要望を申し上げたいと思います。

質問

多摩区構想分野別基本方針Ⅳ都市防災について伺います。

本市では市全体を上げて震災被害に対応する防災を進めてきた点、また、本年の台風19号の被災を受けて風水害への対策を要するという点は代表質問を通じて論じられてきました。しかし、災害時における医療供給元となる病院、クリニックなどの医療機関については、多摩区構想においても十分に触れられているところではございません。特に風水害対応につきましては、台風19号の経験を踏まえて、さらなる対策を要することが明らかになったと考えられます。

多摩区における特に重要な医療拠点、そして県によって災害拠点病院に指定されている多摩病院は免震構造のため震災における機能停止リスクは低いと考えられます。免震構造だから安心というのは拙速な議論ではございますが、ここは十分に議論がなされてきたと考え、翻って、先日のような風水害が発生した場合、またはさらなる甚大な被害を想定した場合、多摩病院では浸水への対策を高度化していく必要があると考えられます。

本年9月の定例会では、被災当初の電気、水の確保が3日間程度なされていることが確認されました。同月の決算審査特別委員会健康福祉分科会では非常用発電機は3階にあり、水の供給の面からも被災当初は対応が十分に可能であるという点が示されたと思っております。とはいえ、メーンの電源設備等は地階にあることを踏まえますと、発災当初3日間、その後、復旧シナリオにおきましては準備を進めていく必要があると思います。

そこで、多摩病院が大規模な浸水被害に遭った際に考えられる被害の内容と、その要因について伺います。また、その被害が実現してしまった際の復旧方針策定について取り組み状況を伺います。

答弁

多摩病院の着工後に整備されたハザードマップや台風19号による市内浸水被害を踏まえると、多摩病院における浸水対策は喫緊の課題と考えております。

平成30年3月改定の洪水ハザードマップ多摩区版によりますと、多摩病院の浸水深は3メートルから5メートルとされております。先般の台風では、多摩病院の建物、設備への被害はありませんでしたが、浸水に備え、施設の現況確認や設計事業者等へのヒアリングを行っているところでございます。

この中で、設計事業者等から、浸水時には建物の地下周囲に存在する免震構造のための空間に水が浸入してしまうこと、吸排気ダクトや配管、電気ケーブルが建物の外壁を貫通している箇所が複数あることで当該箇所からの水の浸入を許してしまう等の指摘を受けており、地下3階にある受水槽や地下2階のボイラー、コジェネレーション設備等、地下1階にある受変電設備への被害が想定されます。地下にある設備に被害が生じた場合、地上3階にある非常用発電機が稼働し、被災後3日分程度の電力を確保することができますが、受変電設備等の復旧に要する期間や費用を精査し、復旧対策の検討、被害防止策の調査研究を進めてまいりたいと存じます。

また、受水槽について想定される被害の程度を確認した上で、受水槽の機密性確保、給水ポンプの水密化など必要な対応を行い、医療の継続に必要な水を確保してまいります。なお、対策が完了するまでの間に浸水被害が生じた場合に備え、さきの台風19号の際も実践しましたが、多摩病院の指定管理者である聖マリアンナ医科大学の附属病院と多摩病院の医療機能がバックアップされるよう、連携を図っているところでございます。

(上原)

発災後の医療の継続は大事な課題かと思います。今回の台風の経験をしっかりと生かして、ぜひ今後も確実に研究を進めていただきたい点、御要望いたします。また、令和元年台風19号の教訓からは、危機管理では、短期的対応、長期的施策というふうに対策が構築されていると思いますが、そちらも意識してあわせてお願いいたしたいと思います。

質問

仮に多摩病院の電源施設等の最低限のインフラが復旧せず、機能が果たせなくなった場合、今の答弁にありましたように、ほかの地域の医療機関の能力を当てにせざるを得ません。被災することにより発生する新たな医療需要、そこにベースとして存在する地域の医療需要、これに安定的に応える、つまり、医療の継続に応えていく必要性があります。

発災後、復旧過程における医療供給体制の考え方について伺いたいと思います。

答弁

大規模災害時において、重傷者から軽傷者までの多数の被災傷病者の発生や医療機関自体の被災が想定される中、一人でも多くの生命と健康を守るためには、市内全域における医療ニーズと市内で活用可能な人的・物的医療資源を速やかかつ的確に把握した上で、効率的、効果的なマッチングを図ることが最も重要と考えております。

こうしたことから、本市におきましては、災害時には市災害対策本部の中に保健医療調整本部を設置し、保健医療調整機能を一元的に発揮できる体制とするとともに、各医療機関における災害に備える自助の取り組みの啓発や、医療機関との連携訓練などを計画的に実施しているところでございます。

多摩病院も含め市内医療機関が被災により機能不全に陥った場合には、人員や物資の投入による機能回復や生命の危機にある患者の他院への搬送など、その状況に応じた対応を想定しております。加えて、市内の医療資源だけでは対応できない場合に備え、昨年度来、神奈川県と3政令指定都市の連携による協議体を設置し、医療救護に関する広域的かつ実効性のある体制構築に向けて継続的な協議検討を進めているところでございます。

(上原)

市内の協力、そして県内の協力体制の構築につきましては、しっかりと取り組まれている点、確認できたと思います。今後もしっかり取り組んでいただきたいと思います。

質問

同じ市内、例えば同じ多摩区の中でも、市内及び県内よりも陸続きの県外の医療機関のほうが距離的に有利であったり心理的にも近いと感じる地域が存在します。多摩区の地域性などを踏まえますと、近隣の稲城市であったり調布市、狛江市などとの連携も、地域要望としては耳にしておるところでございます。さきの多摩区構想の交通体系の中にも他市との連携が上げられております。

長期的展望の一つとは思いますが、現在はまだ事業化されていないものの中に、広域レジャー施設であるよみうりランド周辺の交通環境の改善の検討を稲城市と連携して行うという方針が示されてございます。分野によらず近隣自治体との連携した取り組みが重要となると考えられます。

市長におかれましては、既存のインフラをできるだけ有効活用する、つながり支え合うといった方針をお持ちかと思いますが、分野を問わず近隣都市と連携し、さまざまな取り組みを進めていくことで、それぞれの魅力の創出、価値や利便性の向上につなげていくことは私自身も大変重要であると考えております。

そこで、他都市との連携について、取り組み、もしくは意気込みについて伺いたいと思います。

答弁

自治体間連携は、現在、多様な分野で進めているところでございますが、広域的な課題に対して複数の自治体で対応することが効果的な場合や、個々の自治体が持つ地域資源を、市域を限定せず相互に活用することで市民ニーズに対応できる場合などに有益であると認識しております。

特に市民ニーズが多様化、複雑化する中では、地域が抱えるさまざまな課題を一自治体の持っている強みだけで解決することは難しくなっていることから、相互の課題解決や市民便益の向上、地域の活性化に向けた取り組みを推進するため、引き続き他都市との連携に基づく取り組みを進めていきたいと考えております。

(上原)

市長より地域資源につきまして、自治体間のシェアなどの可能性について言及いただきました。

私の選出区である多摩区では、例えばテニスコートは稲城市、市民ホールの利用は調布市といったぐあいに近隣自治体の施設利用も少なくないところでございます。市民の利便性の向上、市民の需要に応えるのが行政とはいいますが、必ずしも単独で解決するわけではなく、市長が先ほど申されたように、広域での自治体連携による供給で効率的にお応えする、そういった広い視野をお持ちである点を確認することができました。多摩区では、多摩区構想の中に「ひと・水・緑――住み続けたいまち 多摩区」として、基本的なまちづくりの考え方が上げられていますが、本市の中では外国人旅行客が集まる特異点も区内に存在しておりまして、観光振興を標榜する本市全体としては、これも見過ごすことはできないと考えております。

また、そもそも住み続けたいまちとするからには、他都市と比べてみて、より魅力的、市民サービスが充実している、競争力が高いという状態を保ち続ける必要があると思います。リニア中央新幹線の開通と同時に、多くの観光客を呼び込むというビジョンも一つの視野として必要です。

そして地元市民とのあつれきが生まれないような観光の振興、今、オーバーツーリズムなども話題になっておりますが、それを実現するためにしっかりとした交通インフラの整備促進を進めていくこと、これを少しでも効率よくスピーディーに行うこと、そのために自治体間連携によって積極的に取り組んでいただけることを大いに期待します。